Eテレのデザイン トークス+という番組のアノニマスデザインの回を見ました。いい刺激になって面白かったので回顧録として書き出しておきます。(ゲスト:プロダクトデザイナー深澤直人)
まずアノニマスデザインとは、「誰が作ったか分からない無名性のデザイン」だそうです。
大量生産される工業製品の中にも魅力的なアノニマスデザインはある。誰々が作った~、作家性~、といったようなもののアンチテーゼとして見られているものだそう。
意外なところでは北海道土産の木彫りの熊などもアノニマスデザイン。
アノニマスデザインはただ名前がなければよいというものではない。皆に良いと思わせる魅力があるのに名前がないというのが重要。
誰が作ったという情報は風化してしまっているのに使われ続けているというのはかっこいい事だよなと思った。
デザインに大事なのはデザイナーの思いや意思といったエゴではなく、モノの必然の形を見つけることだそう。
デザイナーとして「自分から生み出されるものって何だ?見つからないぞ」と悩んだときの話が印象深かった。
俳人 高浜虚子の「俳句への道」を読み、客観写生という概念に触れた。俳句とは短い言葉で自分の心情を歌い上げるものではなく、そこにあるものや起きている事象を客観的に捉え、そのまま歌い上げるだけで良いというのが客観写生の考え。そこに嬉しい悲しいといった自分の心情を重ねすぎると読み手が入り込む隙がなくなる。
そこから自己主張をするデザインはよくないんだと悟り、そこからアイデアが沢山出るようになったそう。どういうデザイナーが作ったという情報なしにストレートにそのモノを好きになってもらいたいと考えている。
自分が心を動かされたものをそのまま描写し、そこに何を思うかは読み手に委ねるという考え方がいいなと思った。
柳宗悦は誰も見向きもしなかった無名の工人たちが生んだ雑器・日用品に美を見い出し「民藝(みんげい)」と名付けた。これが深澤直人が愛するアノニマスデザインの源流であるという。
削ぎ落とされない研ぎ澄まされない雑然としていてユーモラスな優しい姿が民藝の魅力。
あとは番組後半にスーパーノーマルという言葉も登場した。
現代のアノニマスの中には普通すぎて誰も意識しないが、生活に欠かせないスーパーノーマルなデザインが存在する。スーパーのカゴや、プラスチックに覆われたカッターなど、スーパーノーマルとは、○○といえばこういう形といったように人々の中にしっくり馴染んで普及しているデザインのこと。
スッと入り込める隙には良さがある。雑みのようなものにもある種の美を見い出す。
アノニマスデザインやスーパーノーマルといったモチーフを自分の身の回りから探し出したり意識したりするのは楽しそうだなと思った。