なぜニコニコ動画はTikTokになれなかったのか

「別にニコニコはTikTokになりたいわけじゃないと思うよ」と言いたい気持ちを一旦抑えて聞いてほしい。

確かにニコニコとTikTokは空気感こそ違うが、歌ってみたや踊ってみた描いてみたなど かつてニコニコを賑わせていた要素を振り返ってみると意外にもTikTokと共通する部分が多い。

 

これは単に若者文化のストリームとしていつの時代もそういったものが人気だということもあるだろうが、僕は「上手くやってれば今TikTokやってる若者は全員ニコ厨って未来あったんじゃないか」とふと思ってしまった。

ではなぜニコニコは今TikTokが座ってる椅子に座れていないのか、考えてみると4つの理由が浮かんだ。

 

 

まずTikTokの差として挙げられるのがラフに撮った動画を上げてもいいという空気作りだ。

「描いてみた」を例に説明する。「描いてみた」とはイラストのメイキング動画や紙芝居アニメなどを取り扱う動画ジャンルで、TikTokでもよく散見される。

ニコニコでもよく見られたが、多くはアナログ絵ではなくデジタル絵一辺倒だったり気合いの入った本気絵ばかりで、スキルのない人の絵やコピー用紙に描いてるのをラフに撮影したような動画は総出で馬鹿にされるような風潮があった。

これらはTikTokでは全く馬鹿にされないわけではないが、少なくとも気負いなくラフに投稿していい空気感がある。これには粗造乱造が起こるというデメリットもあるが、これは一概に悪いとは言えないように思う。詳しくは後述。

 

 

ニコニコは利用層が広すぎた、一枚岩でなかったのも悪く作用していたような気がする。同じニコニコユーザーであっても自分の興味のないジャンルのユーザーを下に見て攻撃するような風潮があった。

具体的には歌ってみたや踊ってみた、アイドル的な実況者などは「恥ずかしくてサムい奴らとそんなものが好きなファン」としてよく攻撃されていた。

こうした利用者同士で馬鹿にし合ったりする空気から、TikTokのような一体感がニコニコにはなかった。

 

 

そして上記2つの理由から投稿者が育ちにくかったのもニコニコが今伸び悩んでいる理由だと思う。

とりあえず自分もやってみるムーブが起きず、多くのユーザーが見る専になる。そうすると現在ニコニコを賑やかせている投稿者が離れたとき、投稿者の新陳代謝が起こらず過疎になる。

粗造乱造でもそのうち育てば良いのだ。育たなくても投稿しやすい空気感に一役買うことができる。それも大事な役回りだ。

 

最後に新規ユーザーが空気感に馴染むための事前知識の不要さ。これは後発サービスの数少ない利点ではないだろうか。

なんだかんだ長い歴史のあるニコニコには独自の様々なネタや文化 ノリがあるが、それを楽しむためにはちょっとずつ勉強していく必要がある。その勉強も楽しめる人間はいいが、そう思わずサッと楽しくなりたいライトユーザーからすると、ニコニコは知らない内輪ノリが飛び交うあまり楽しくないサイトだろう。

 

 

総括すると「空気感」というふわ~っとしたところに集約されるが、捉えどころがない故にイメージ戦略は大事だ。TokTokも若者向けのテレビドラマなどでバンバンCMを打ってイメージ通りのターゲットを確保している。

 

ニコニコがサービスを開始したのは2007年。スマートフォンが普及していなかったのもあって今TikTokを利用しているようなタイプの人はネットのヘビーユーザーではなかった。

ゆえにニコニコがメインカルチャーよりサブカル気味に、しかも良くも悪くもB級サブカル寄りに舵切りしたのは当たり前だ。

時代の変化に着いて行けなかったと一蹴するのは簡単だが、一度ついたイメージを変えるのは難しい。改名したDMMとか見ててもそう思う。

 

 

最後にニコニコを褒めて終わるが、TikTokは投稿動画をラフに消費されるようなスタイルなので、過去の動画を漁るというのがとても難しい。というかほぼ不可能。

その点ニコニコの検索機能はいい出来をしており、ちゃんと過去の動画を資料として漁ることができる。

なので運営がそれで飯を食えるかは知らんけど、ニコニコは運営が頑張る限り ある種ネットの映像資料室的な役目をし続けるだろう。

 

だからちゃんと投稿動画の容量上限を上げるの頑張れよ!